広がる 「ぐんま愛」 移住から 「創生」へ

人口減少の克服や地域の活性化に向け、若者の定着を促す取り組みが県内各地で展開されている。若年層の県外流出が目立っており、将来の出生率にも関わる若年人口を維持するため、行政、民間ともに知恵を絞っている状況だ。

県や市町村の多くは本年度の当初予算に移住・定住促進関連を手厚く計上。民間も本県の魅力発信や移住相談への対応に積極的に動く。人口減解消に挑む地方創生の本格始動から2年。群馬の未来を見据え、地域をもり立てようという「ぐんま愛」が県内各地に広がっている。

若者 地域に元気

「きたかる」の校正刷りを見ながら談笑する藤野さん(左)と松田さん。 移住者同士で会話が弾む=長野原町北軽井沢

魅力伝える情報誌

「こんな感じに仕上がってますよ」。雪の残る3月下旬の長野原町北軽井沢の乗馬クラブ。厩舎(きゅうしゃ)の前で、藤野麻子さん(43)は無料情報誌「きたかる」の校正刷りを広げた。乗馬クラブのオーナー、松田翔平さん(34)は愛馬とともに自身が大写しになった紙面を見て「うわぁ、すごい扱い」と顔をほころばせた。

「きたかる」は地域活性化に取り組む地元団体が昨春復刊させた季刊誌。2万部発行され、町内全戸に配布されるほか、飲食店や観光施設に置かれる。編集メンバーが浅間北麓を取材し、移住者や地元住民の生活、地域文化などを紹介している。

中心メンバーの藤野さんは、北軽井沢に引っ越して13年の移住組だ。「移住者も地元住民も生き生きと生活している。暮らしぶりをそのまま紹介するだけで、北軽井沢という地域の良さを伝えられる」。藤野さんは「きたかる」が、自分のような移住者を呼び込むツールになると考えている。

増える協力隊員

経営するカフェに来訪した外国人と会話を楽しむ黒沢さん夫妻(中央)=上野村勝山

こうした魅力発信をはじめ、若者の定着を誘導する動きが県内で目立つようになった。

高齢化率日本一の南牧村では、村民の有志でつくる「南牧山村ぐらし支援協議会」が若者の移住を促進しようと、空き家調査や就職先の紹介、都内での移住相談など積極的に活動している。

協議会役員の神戸とみ子さん(64)は「移住希望者にとって働き口の確保が重要課題。職業安定所を回るなどして役立つ情報を集めている。1人でも多く呼び込みたい」と意気込む。

自治体は近年、若者の定住に直結するとして、国関連事業の「緑のふるさと協力隊」や「地域おこし協力隊」に注目する。本県の隊員受け入れ数は都道府県別で少ない方だったが、2015年度に隊員を受け入れる市町村は14と前年度の3倍以上に。隊員数は16年度末に60人を超え、5年前の12倍になった。

上野村勝山で古民家カフェを経営する黒沢美穂さん(34)は元隊員の一人。緑のふるさと協力隊として8年前に村に派遣され、地元出身の恒明さん(34)と結婚して定住した。

「協力隊の活動のおかげで村の人とつながりができた。上野村は対応が手厚く、その分、溶け込みやすかった」と黒沢さん。「他地域でも働き口の紹介や地元住民との交流促進など、支援が充実すれば、定着する人は増えるのでは」と話す。

本県は進学や就職する段階で若者が首都圏に移るという構造的な課題を抱える。県推計では、県外の大学・短大に進学する人のうち、県内で就職する人は30%程度。県が19年度まで取り組む総合計画では、Uターン就職率を19年度に50%まで引き上げると目標設定した。

前橋市の移住コンシェルジュを務める鈴木正知さん(52)は「卒業後に群馬で暮らすイメージがないと戻ってこない。在学中から意識付けすることが必要だ」と指摘する。

家や仕事を紹介 Uターンも推進

PRに試行錯誤

都内で開かれた上毛かるた大会。 県内外から70人超が参加した=2月25日、東京都北区

新たな視点で群馬をPRする取り組みも出始めた。

「ネギとかこんにゃくばっかり有名で~」。15年に動画投稿サイトに公開された下仁田町のPR動画「人と町の風景」は、流れる曲の自虐めいた歌詞と町民のほのぼのとした様子が話題を呼び、8万回以上再生された。

撮影を担当した同町出身の映像制作業、中島元気(もとき)さん(35)は「田舎だけど最低限の暮らしはできる町。うまくPRすれば『軽めの田舎暮らし』を希望する人に選んでもらえると思う」と、移住者を増やす余地はあると考える。

県民に愛着のある上毛かるたで「ぐんま愛」を県外に広めようとする人もいる。安中市出身の会社員、渡辺俊さん(40)は都内で上毛かるた日本一決定戦を主催。2月下旬に行われた5回目となる大会では、過去最多の24チーム、70人超が参加した。

高崎市在住の漫画家、井田ヒロトさんの人気作「お前はまだグンマを知らない」でも取り上げられるなど、上毛かるたへの注目度は全国的に上昇中で、県外出身者の参加も増えている。渡辺さんは「群馬を知ってもらういい機会。まずは交流人口の増加に、さらには移住促進にもつながれば」と期待している。

対策ない場合 60年に120万人

県人口は2004年の203万5千人をピークに減少傾向にある。県の試算では、何も対策を講じないと60年時点で約120万人まで落ち込むが、合計特殊出生率が30年までに1・89まで上昇するなどした場合は約140万人でとどまると見込む。

出生率の回復に加え、若年男女(15~39歳)が転入超過だった1990~95年の社会移動の状況を再現できれば約160万人を維持できる程度に減少ペースを抑えられるとしている。