安中市
豊かな自然と交通アクセスの良さに恵まれた安中市。コロナ禍で新しい生活スタイルが浸透しつつあり、その暮らしやすい環境が注目されている。社会が変化する中、指針とするのがSDGs(国連が定めた持続可能な開発目標)だ。移住してきた人、外国人、障害者―。多様な住民が互いに認め合い、共に生きる地域づくりを進めることで、「誰一人取り残さない」市を目指している。
心強い頼れる関係
岩手県から移住 千葉 康太さん
就職を機に、千葉康太さん(38)=松井田町人見=は18歳で岩手県から本県に移り住んだ。幼なじみの幸さん(38)と結婚し、26歳で現在の場所に家を建てた。「安中市民の同僚に紹介してもらった。穏やかな場所で、災害もあまりないのがいい」と話す。
環奈ちゃん(5)、玲奈ちゃん(2)の2人の娘に恵まれ、近所付き合いの大切さを実感している。幸さんは「普段から子どもたちのことをかわいがってくれるし、いい人たちばかり。近くに親戚がいないので、困った時に頼れる関係を築けているのは心強い」と感謝している。
千葉さん夫妻は岩手県一関市出身。人口は安中市の2倍ほどいるが、面積が4倍以上もあるため、安中の方が都会に感じるという。
「安中は適度に商業施設と自然がある。のんびりした環境は故郷に似ていて、性に合っている」。周囲の温かい目に支えられ、子どもたちが伸び伸びと成長していく姿を思い描いている。
家族3人 穏やかに
中国山東省出身 王 加雷さん
中国山東省出身の王加雷さん(41)=原市=が安中市に住み始めたのは2014年。高崎市の自動車部品製造会社に就職したのがきっかけだ。16年には妻の阳建梅さん(38)と長女の王子阳さん(11)を母国から呼び寄せ、家族3人で穏やかに暮らしている。
「日本は生活しやすく、安全安心。子どもの将来のことを考えて移住を決めた」と王さん。小学校に入学する子阳さんのため、安中市国際交流協会が日本語学習をサポート。来日当初は全く話せなかったことが信じられないほど、今では流ちょうな日本語を話す。
子阳さんは「安中は自然豊か。友達もたくさんいて学校がとても楽しい」と笑顔を見せる。建梅さんも協会主催の日本語教室やイベントに参加するなど、市民として充実した日々を過ごしている。
昨年、永住権を取得した。「安中は都会過ぎず、田舎過ぎず、気軽に日帰り温泉施設に行けるところもいい。近いうちにマイホームを持ちたい」
得意分野を生かす
就労継続支援B型 ワークショップほしの子
ワークショップほしの子=板鼻=は、知的障害や精神障害のある人の就労をサポートする施設だ。現在の利用者は18~60代の18人。同じ敷地内にある企業から仕事を請け負い、プラスチック成形などの作業に取り組んでいる。
昨年11月、安中市とセブン―イレブン・ジャパンが包括連携協定を結んだことを受け、初めてエコバッグ作りに挑戦した。端切れを使い、290個制作。納品まで自分たちで行い、市内のセブン―イレブン13店舗で2月末まで販売した。
手先が器用という池田真由美さん(41)は「お客さんの笑顔を思い浮かべながら作った。生地を合わせるところが楽しかった」とうれしそうに話す。
施設を運営するP.S.サポートの星名由香社長(50)は「施設で行う仕事の幅を広げたいと思っていた。利用者それぞれに得意なことがあるので、その力を生かせるところに就職できるようサポートしていきたい」と話している。
移住定住促進サポート充実
市内への移住を促進し、定住人口の増加による地域活性化を目的に、さまざまな移住定住支援策を実施している。
- ・安中市住まいりー奨励金
- 初めて市内に住宅を取得し、定住する人を対象に「奨励金」として5万円(住宅取得費用・税込みの3%、上限5万円)を交付。世帯状況により加算。
- ・空き家バンクの登録物件のリフォーム補助
- 工事費用の2分の1(上限20万円)もしくは家財処分の処理費用の2分の1(上限10万円)を補助
- ・お試し移住
- 碓氷峠くつろぎの郷コテージを利用して「あんなか暮らし」を体験
SDGsで心をつなぐ ~やわらかい社会を目指して~安中市長 茂木 英子
コロナ禍により、身体的距離をとることが求められているいま、私たちが考えなければいけないのは「心の距離」までも遠くしないことです。
この社会には、同じ人は誰もいません。本市は、さまざまな人たちがお互いに認め合い、ともに生きていける、やわらかい社会を目指しています。
これからも「誰一人取り残さない安中市」を実現するため、さまざまな施策により、心のつながりを皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。