高山村

緑豊かな山々に抱かれた高山村。四季折々の花に彩られ、秋には棚田が黄金色に輝く。温泉やキャンプ場、牧場といった地域資源に恵まれ、道の駅「中山盆地」を核とした交流拠点整備が進む。多様な地域資源を生かしつつ、人の温もりやつながりを胸に、この地で暮らす人たちを訪ねた。

豊かな自然にひかれ移住就農

渡辺 誠さん・藍さん、聖光さん
高山村での充実した生活に笑顔をみせる藍さん、誠さん、聖光さん(左から)

渡辺誠さん(37)と妻・藍さん(37)、誠さんの弟・聖光さん(30)は、村内の有機農園「銀河高原ファーム」で2年間学び、今春、独立した。

3人は伊勢崎市出身。山歩きが趣味だった渡辺夫妻が、身近に豊かな自然のある高山村に移住したことが就農のきっかけ。誠さんが造園業で経済基盤を築く一方、藍さんは農業体験イベントに参加。それを機に同ファームでのアルバイトを経て就農を決意、農業研修生となった。有機農業に興味があった聖光さんも合流した。今、3人は村内に民家を借り、新たな生活に挑戦。夫妻と聖光さんは、それぞれの農園に「花笑み」「わとわ」と名付け、高山きゅうりやナス、マコモダケなどを栽培。就農支援金制度を利用したり、同ファームを経営する後藤明宏さんの指導で販売先を確保するなど、無難にスタートした。

「初めての収穫を経験して希望が生まれた」と3人は口をそろえる。仕事の合間には、山菜・きのこ採り、イノシシ狩りなども。「自然と食、そして人の良さ。ここでは人が自然の中に生かされている」と藍さん。充実した生活に笑顔をみせる。

両親から花園継承 リンドウ30種類を栽培

池田 瑞絵さん
7月から11月にかけて30種類のリンドウを出荷する池田さん

「高山産リンドウは、防虫ネット栽培のおかげで花持ちがいいんです」。池田瑞絵さん(41)は、もともと自営業を営んでいた両親が始めたリンドウ園「池田花園・みず風」を継承、6年前に新規就農した。子どもの頃から花が好きで、生花店で働いたこともある。リンドウ園を継ごうと村内のキク栽培農家で研修。就農支援金制度を利用しながら研さんを積み、リンドウ園を経営。制度の利用期間が終了した今春、独り立ちした。

7月から11月にかけて約30種類を切れ目なく出荷する。村の花でもあるリンドウは、かつては仏用のイメージもあったが、種類が豊富で色もさまざま。近年はお祝い用としても人気だ。

「栽培を始めた頃と比べて不順な天候が多く、病気の予防対策が一番重要」と池田さん。虫に根を食われ、苗を植えて30分で倒れてしまったこともある。防虫ネット栽培を徹底しても虫との戦いは続く。「『同じ種類でも花が大きく、丈も伸びている』『鮮度が長持ちする』などと市場で高く評価されると、うれしいですね。高山産リンドウの魅力を広めるため、これからも頑張りたい」

高山産野菜を活用 新メニューを考案

ベジフルグループ
来場者に提供する「ビーツ御膳」を盛り付るベジフルグループのメンバー

いなり寿司やきんぴら、コロッケ、漬物、サラダ…。ごく一般的な家庭料理だが、いずれもロシア料理「ボルシチ」の材料として知られるビーツを使ったものだ。「ビーツ御膳」と名付け今月20日、道の駅中山盆地でのイベントで販売。健康食品として話題の食材を身近な料理にアレンジしたとあって、来場者が次々と訪れ、御膳を味わった。

御膳は高山産ビーツをPRしようと、村内の栄養士でつくる「ベジフルグループ」(高橋絹枝会長)が考案した。「泥臭さをなくし、いろいろな方に食べていただけるよう和食を中心に考えた」と高橋会長。「こんな食べ方ができるの」「おいしいね」といった声に笑顔を見せた。

グループは2012年、村などから高山きゅうりの料理の考案を依頼されたのを機に発足した。酢の物やチキンカツ、スープなどを考え、数年で「高山きゅうり御膳」としてPR できるまでメニューが増えたことから、現在は第2弾としてビーツに取り組んでいる。

今回は利根実業高(沼田市)の生徒9人が参加。チーズケーキとムース、プリンのスイーツ3種類を作り、御膳に加えた。高橋会長は「高校生の発想はおもしろい。これからも協力して、おいしい料理を考えたい」と意欲的だ。

「地域のために」と 農業体験など支援

ねこやなぎの会
高山小でサツマイモ掘りに協力するねこやなぎの会のメンバー

「地域のために何か手伝いたい」と2005年、有志7人で結成した。最初に取り組んだのはオオヤマザクラの植樹。毎年200本ほど植え現在は1500本となった。今でも下草刈りを継続。14年度には日本さくらの会から「さくら功労賞」を授与された。

高山小のサツマイモ堀りへの協力は10年ほど前から続けている。春に学校敷地内の畑に苗を植え、秋に収穫する。会長の松井盛也さん(62)は「イモが取れたときの子どもたちの笑顔がやりがい。小学校時代の思い出にしていただけたらうれしい」と話す。収穫したサツマイモの一部は小中学校の給食で活用。サツマイモ堀りは高山幼稚園でも行っている。

事務局長の中山輝夫さん(68)は「『ねこやなぎ』の花言葉は『自由』『努力が報われる』など。そんな思いを会の名前に込めた」と語る。会員は15人ほどだが、それぞれ仕事を持っており全員が集まるのは難しい。「自由参加で打ち上げのみもOK.。それが長く続ける秘けつ。いろいろな人と知り合えるのも醍醐味」と松井さん。これからも楽しみながら、地域のために活動を続けていく。

三國街道中山宿祭り
11月9日(土)13~16時

会場は道の駅中山盆地。中山宿の歴史解説や歴史ガイドウォーク、和太鼓演奏、無料体験コーナー、甘酒無料配布、農産物詰め放題など多彩な催しで、高山村の楽しさを味わえる。イベント終了後の17時半からイルミネーション点灯とサックスコンサートを予定。

持続可能な村づくり

高山村長 後藤 幸三

高山村では、次代へとつなぐ持続可能な村づくりを目指し、道の駅中山盆地を核とした「むらの中心地づくり」を進めています。その取り組みの一つとして、観光交流館の整備を計画しております。この場所が、今回ご紹介させていただいた皆さまをはじめ、地域内外の人々の交流や活動の場としての役割を担うことを期待しております。

11月9日には道の駅中山盆地で「三國街道中山宿祭り」が開催されますので、ご家族おそろいで、ぜひおいでください。