太田市

新しい産業団地の造成が進み、工業都市としての基盤がさらに強化される太田市。大規模な事業の傍ら学生の留学制度や母親の就職面接会、女性の起業塾など、きめ細かい施策により若者や女性がいきいきと働ける「しごと」の場が広がる。一方で放課後の小学生の居場所づくり、東京オリンピック・パラリンピック大会のホストタウン登録、市民参加のブランド力発信事業などによって子育て世代が定着し、「ひと」が集い交流する元気なまちづくりが進む。

安全で楽しい居場所

働きなどで昼間、保護者が家にいない小学生に安全な居場所を提供するため、市が校内の余裕教室を使って独自に取り組んでいる「こどもプラッツ」。スタッフに見守られ、異なる学年の子どもたちが一緒に自習したり遊んだりして過ごしています。

放課後児童クラブに入れない子どもの受け皿として2014年度にスタート。開設は月曜から金曜の放課後(長期休業中は午前8時半)から午後5時45分まで。

子どもたちは宿題を片付けるとトランプをしたり、校庭に出てサッカーや縄跳びなどをしたりと思い思いに楽しんでいます。安全を管理するスタッフとともに、上級生がちゃんと下級生の面倒を見てくれています。利用料は月額3500円(8月のみ6000円)。

「子どもが校外に出ることがないので安心できる」「料金が安いし、預け先があるのはうれしい」と保護者からは好評です。事業は毎年拡大していて、本年度は21校で実施。新年度は中央小と宝泉東小の2校でも始めます。

産業団地 造成急ピッチ

田市に進出や移転を希望する企業に対応するため、太田市土地開発公社が35ヘクタールの分譲を進める「おおた渡良瀬産業団地」は、本年度まで3次にわたって分譲募集が行われ、市内外から19社の進出が決まりました。新年度にはいよいよ土地の引き渡しが始まり、一部企業の稼働が見込まれています。

北関東道・太田桐生インターチェンジから車で5分。国道50号をはさんで吉沢、原宿地区に広がる同産業団地では、造成工事や団地内の道路建設が急ピッチで進んでいて、隣接する研究開発拠点の太田リサーチパーク、物流拠点の太田流通団地と合わせて大規模な産業拠点となります。

進出が予定される19社の業種は情報サービス、食品製造、金属製品製造、道路貨物運送など多種多様。これにより、雇用の創出と税収の増加が期待できます。

2018年の工業統計調査によると、市の製造品出荷額等は2兆9375億円で全国12位。新たな産業団地の誕生により、ものづくりのまち「おおた」を一層加速させていきます。

太田市長 清水 聖義
ひと

太田の魅力、市民が発信

太田の魅力を市民の力で発信しようと、市は地方創生推進交付金と企業版ふるさと納税を活用して女性向けガイドブックとPR映画を製作した。

「太田市のガイドブック」はA4判32ページで1万部発行。公募の市民ライター24人がプロから編集方法を学び、20代から40代の女性をターゲットに太田の食べ物、みやげ、遊び場などの情報を盛り込んだ。


映画「サルビア」は、「共生」をテーマに中学生の冒険を描いた短編。ヒューストン国際映画祭で受賞歴のある小田浩之さんが監督し、主役の若林尚紀さんとシュナイダー・カミユさんら市民が出演した。国内外の映画祭に応募する。

東京五輪で広がる交流

東京オリンピック・パラリンピック大会で、市はオーストラリアとアフリカの内陸国、マラウイ共和国のホストタウンに登録されている。五輪の事前キャンプを通して交流はさらに広がりそうだ。

オーストラリアのソフトボールチームとは、スポーツを軸に交流を重ねてきた。本年度は9月の五輪予選キャンプで選手たちが太田小を訪れ=写真、児童が育てた蚕を手にのせるなど、日本の伝統文化に触れた。

昨年3月、市は両国の紹介イベントを開いてマラウイ伝統の布を展示、特産のコーヒーをPRした。本年度は同国に消防車3台、救急車1台などを贈る支援活動を行った。

しごと

留学+地元企業、未来の人材育成

産学官の連携により、海外留学と地元企業のインターンシップを組み合わせた「新田山グローカル人材育成事業」が本年度も行われ、6人の学生が最長5カ月の留学を体験した。

参加したのは関東学園大、群馬大、慶応大の6人。7月に壮行会が行われ=写真、8月以降に中国や米国、ニュージーランドなどでがんワクチン開発、多文化共生、女性活躍社会といったテーマで勉強。留学前後に地元企業・事業所の現場も学んだ。

市の提案が国などの制度に採択され、2018年度から3カ年実施。グローバルとローカルの視点を併せ持つ若者を育成するのが狙いで、渡航費や授業料などが支給される。

仕事探す母親と企業をつなぐ

働きたい母親たちと人材を求める企業・事業所をつなぐ「おおた子育て支援就職面接会」が2月、市内の結婚式場で開かれ、20代、30代を中心に就職支援セミナーを受講し、126人が企業の採用担当者との面接に臨んだ=写真。

就職支援セミナーでは、講師がメークや本人に合う服装の色、ビジネスマナーなどをアドバイス。面接会には、子育て世代の採用に理解のある36社が参加し、仕事の内容や勤務時間などについて説明した。

面接会は市、ハローワーク太田、太田商工会議所などが毎年開いており、例年、面接を受けた人の半数ほどが採用されている。

夢をかたちに、女性の起業支援

起業を考える女性を対象にした創業塾「おおたなでしこ未来塾」。5期目の本年度は11人が夢を実現するノウハウを学んだ。

起業講座は、7月から市産業支援センターで4回開催。人材育成業を手掛ける堀江敦子社長が講師を務めたほか、塾出身者が指導・助言者として受講生を支援した。

受講生はビジネスの種の見つけ方から顧客の設定、プランをお金にする方法などを勉強=写真。最終日に計画をプレゼンし、1月にはフォローアップ講座も開かれた。

塾出身者はヨガインストラクター、クッキー作りなどで活躍している。塾は新年度も7月から開かれる予定。