みなかみ・ 北山さん まき割り 家族4人で 待ち遠しい冬 もうすぐ

郁人さん(左)からまき割りの指導を受ける桂月さん

カン、カン、と木をたたく音がこだまする。北山郁人(44)=みなかみ町藤原=が大きな弧を描いておのを振り下ろし、まきを割っていた。育てた稲の収穫といった実りの秋を喜ぶ一方で、地域の人たちは厳しい冬を乗り越えるための準備を進めている。大雪に備えて除雪機のメンテナンスや雪囲いなど、周囲が冬支度に取り組む中、北山家も冬に備え、自宅で使うまき割りにいそしんでいた。

「足を肩幅に開いて、まきに当たる瞬間に腰を落とす」。郁人が長男の桂月(13)にまき割りを指導していた。北山家は近所で不要になった木や倒木をもらってきたり、自分で倒したりしたものをまきとして使っている。チェーンソーで玉切りし、丸太にしてまき割り台の上に並べ、おのでたたく。木の種類などでおのも使い分け、割れたまきが散らないよう、まき割り台はタイヤで囲んである。桂月はなかなか割れないまきに苦戦するが、郁人は「その調子。同じ所に当てて」とアドバイスした。

北山家は給湯にもまきを使う。自宅の外壁が隠れるまで、まきを積む必要がある。乾燥させた木材を毎年秋ごろにまきにして、10月中旬からストーブの燃料として使い始める。郁人のまき割りのキャリアは10年以上で手慣れたものだが、「大変は大変。本当は定期的にやった方がいいんだけど、1年の決まった時季にしかやらないから」と筋肉痛は避けられないようだ。

燃料は周囲の木を使うため、運搬や手間を除けばほとんど無料な上、「灯油より暖かい」という。しかし、山林に囲まれた藤原地区でも、手間を考えてまきを使っている家は数えるほどしかない。郁人は「こんなにたくさん木があるのだから、遠くから石油を運ばなくてもいいよね」と、近くの山林を見渡して笑う。山間部で万が一灯油の供給がストップしても、暖を取れる安心感もある。

家族4人で順番におのを振りながら、冬支度は順調に進む。冬がやってくれば、周りはスキーシーズン真っ盛りとなる。みなかみの雪は世界でもトップクラスの量と質を誇り、外国から訪れる観光客も多い。家族でスキーを楽しむ北山家にとっては、厳しくも待ち遠しい季節だ。今年は長年愛用してきたストーブも新しいものに買い替える予定。少しずつまき割りのこつをつかんできた桂月を見ながら、郁人は「そろそろまき割りも任せられるようになるかな」と声を弾ませた。

(敬称略)