みなかみ・ 北山さん 観光イベントへ 知恵 念願の積雪 最大限活用

除雪作業をする郁人さん。雪は生活にさまざまな影響を与える

屋根から長く伸びたつららや、せり出した雪の塊を、スコップでたたいて落とす。みなかみ町藤原の住民にとって、冬と雪はセットでやってくる生活の一部だ。北山郁人(44)は除雪機のエンジン音を響かせて、家の前に積もった雪を脇にかいていく。長女の瑠那(11)はその間に飼っているウサギを散歩させ、長男の桂月(13)は積もった雪を切り出して遊び始める。

例年に比べて遅い積雪だが、先日の大寒波襲来で一気に降り積もった。大雪は交通機能をまひさせるなど、必ずしも歓迎されるものではないが、郁人は「雪がないとスキー場も始まらないし、寒いだけの田舎になっちゃうから。雪があるだけ恵まれている」と話す。今季は町内のスキー場も営業開始を延期するなど雪不足に悩まされていたため、念願の積雪だった。

郁人の仕事は観光や田舎体験の受け入れ。夏場と比べると少ないが、冬場は雪国体験をPRし、外国人観光客にも評判が良い。県外の中学生が雪国体験に訪れることもあり、雪合戦などの競技で雪上運動会を企画して楽しんでもらうなど、冬場の観光需要を盛り上げている。

代表を務めるNPO法人奥利根水源地域ネットワークでも、3月に藤原スキー場で開く雪まつりに向けて準備を進めている。さまざまな模様を自然や建物に投影する空間照明アート「デジタル掛け軸」も行う予定だ。雪という観光資源を最大限に活用するため知恵を絞っている。

「道の除雪もしてもらえるし機械もあるから、住むのはそんなに大変だとは思わない」と郁人は笑う。雪が積もれば、どこでも桂月や瑠那の遊び場になる。豊かな自然に囲まれ、四季の移り変わりを肌で感じられる土地で子育てできることに満足感もある。「ここで生活してれば、都会で雪が降っても動じないでしょ」

一方で、過疎化と高齢化は深刻な問題だ。雪の重さによる空き家の倒壊は後を絶たず、高齢者にとっては毎日の除雪が重荷になっている。郁人も雪かきの手伝いに出ることがあるが、限られた人手で無償で行うにも限界がある。「お金が発生する方が頼む方も頼みやすい。町の補助制度も使って、たとえ少なくても報酬の発生する仕組みが作れないか」。地域の一員として課題を真剣に考える姿があった。

(敬称略)