伊勢崎・ キシモトさん 自慢の味 日本人にも メニュー2カ国語に

日本語メニューをアキナさん(左)に見せるアキミさん。 仲良し姉妹が店を支える

連日猛暑が続く伊勢崎市。やや暑さが和らいだ午後8時すぎ、ハンバーガー店「KMT」(同市日乃出町)では日系ブラジル人のキシモト・ケイフク(52)、トシコ(63)夫妻が調理に追われていた。開店して5カ月たち、同郷の人たちを中心にリピーターが増えている。

夫妻の次女、アキナ(28)が姿を現すと、忙しい店内の空気が一変した。腕に抱かれているリミは5月に生まれたばかり。アキナは4月まで大きなおなかで店を手伝っていた。その姿を見ていた常連客も家族のように誕生を喜んでいる。双子の姉、アキミ(28)は「赤ちゃんが来ると店の雰囲気が楽しい感じになる」とほほ笑む。

リミが生まれたのはアキミ、アキナ姉妹の誕生日の翌日。家族皆で2人の誕生祝いをしている時に産気づいた。全員で産婦人科クリニックに直行。無事に産声を上げるとトシコとアキミは涙を流して喜んだ。

名前は夫妻のルーツである沖縄出身の歌手、夏川りみにちなみ、アキナが決めた。「響きがかわいいと思った。優しい子に育ってほしい」と願っている。

今は子育て中心だが、少し落ち着いたら再び店を手伝うつもりだ。アキミは「アキナが戻ったらデリバリーを始めたい」と話す。隣接する弁当店は宅配をしているが、ハンバーガー店は店内で食事をするかテークアウトのみ。一方でハンバーガー店は日本語メニューが完成し、より幅広い人に利用してもらいたいと考えている。

ポルトガル語のメニューを裏返すと日本語メニューになっている。ハンバーガーだけでなく、サイドメニューも豊富だ。コシーニャは「ブラジル風鶏肉コロッケ」、キビは「ブラジル風肉団子」というように料理の説明が書いてあり、ブラジル料理になじみのない人でもイメージしやすい。

「今はまだ日本語メニューを見る人は少ない。もっと来てほしい」。自慢の両親の料理を多くの日本人にも味わってほしいと思っている。

来日した時5人だった家族は14人になった。6人の孫のうち2人は小学生。もうすぐ待望の夏休みだ。アキミの長男のタカユキ(7)は「川で遊びたい」と目を輝かせる。休みなしで働いている夫妻も8月の第3週は店を閉め、家族でのんびりとした時間を過ごす予定。「今年も海に行けたら」。今から待ち遠しい。  

(敬称略)