藤岡・ 渡辺さん 作品展示 来場者と交流 カフェにアートの季節

鬼石地区のアート祭りで来場者と交流する渡辺夫妻(中央奥)

豊かな自然に囲まれた藤岡市鬼石のギャラリーカフェ「カタチ」。食欲が増し、芸術に興味が湧く秋はうってつけの季節だ。カフェを営む渡辺嘉幸(49)、彩英子(39)夫妻は、客をもてなす憩いの空間づくりに励み、地域とのつながりを強めている。

10月初旬のある日、美術家の彩英子は自慢の床の間を公開した。9月下旬に鬼石で開かれた「かんな秋のアート祭り」に出品した作品などを展示。芸術を通して知り合った画家やバイオリン職人ら仲間にお披露目した。

シンプルな三段の飾りで、独特の空間演出が好評だった。最上段にはチベットの高僧が仏具として使った楽器「シンギングボウル」を置いた。中段には、まな板をありのままに描いたスケッチ、下段には庭に生えるカエデの葉を添えた。「アート祭り」に出品した瓶詰めの作品も飾り癒やしを演出した。

「作品を通して人と関われることがうれしい」と彩英子。移住する際に決め手の一つになった床の間が仲間とのつながりを強めた。「アート祭り」では国内外26人の芸術家に交ざり、作品を出品。会場で仲間や来場者に自分から声を掛け、コンセプトを語った。アンケートに答えてくれた来場者とは、連絡先を交換するなど世界を広げた。

一方、独身時代から都内で10年以上、ギャラリーカフェを営んできた嘉幸は、彩英子との二人三脚でつくる「美的空間」に満足している。手狭で壁掛け程度の展示しかできなかった当時と違い、広い空間で作品展示ができることを喜ぶ。オープン当初からカフェのメニュー開発にも力を入れ、今では20種類を提供できるようになった。

メニューは地場産農産物の使用にこだわる。秋の味覚としてお勧めなのが、鬼石特産の「冬桜かぼちゃ」を使ったケーキだ。地元の卵とバターで素朴な味わいに仕上げ、黄色とオレンジの色合いが食欲をそそる。コーヒーは、地域の店で自家焙煎(ばいせん)されている豆をふんだんに使用。「少しでも地産地消に協力できれば」と話している。

昨年2月に移住し、住民の協力でカフェをスタートさせた2人。個性を生かした活動を通じ、つながりを広げている。「地域のために恩返ししたい」と前向きだ。

(敬称略)