渋川・ 堀井さん 触れ合い 新たな刺激 野菜や加工品を直売

野菜や加工品を販売する一平さん(右)と裕紀さん(中央)。イベントは顧客と交流できる貴重な機会だ

前橋市・敷島公園近くのフリッツアートセンターで9月末に開かれたマルシェ。小さなブースが緑豊かな庭のあちこちに並んだ。出展したのは素材や製法、栽培法にこだわった加工食品や農産物、雑貨などを扱う十数店。その中に堀井一平(39)=渋川市赤城町=と妻の裕紀(36)が営む「あっちゃーふぁーむ」のブースもあった。

「一つください」「ありがとうございます。450円です」。人気商品はスパイスの効いたネパールの蒸しギョーザ。自分たちで収穫した野菜を使い、試行錯誤の末に完成させた自信作だ。入れ代わり立ち代わり客が訪れ、昼前には完売。蒸しギョーザが売り切れた後も客足は絶えない。キュウリやニンジン、カボチャといった野菜、マスタードなどの加工品が次々と売れていった。

年間を通して数十種類の野菜を栽培する。収穫した野菜は都内に出店している野菜店に持ち込んだり、顧客に直接販売したりすることもある。自宅周辺の畑で農作業をする2人にとって、マルシェのようなイベントは、顧客と言葉を交わせる貴重な機会。繁忙期以外はできる限り出展しようと心掛けている。

「イベントに参加すると、農家は野菜を作っているだけじゃ駄目だということを実感する」。顧客だけでなく、ものづくりや農産物に対して同じような考えを持つ出展仲間との何げない会話や情報交換が新たな刺激となる。裕紀は「野菜の食べ方を聞かれたり、逆に教えてもらったり。『いつも野菜を買っているけれど、どんな人が作っているのか会ってみたかった』というお客さんもいる。そんなコミュニケーションが楽しい」と笑顔を見せる。

イベントは春と秋が多い。それぞれの旬の野菜を中心に販売するが、今年は秋野菜の収穫が少し遅れている。原因は夏場の大雨や猛暑。種をまいた後に大雨で流れてしまったり、日照りで発芽しなかったりしたケースも。水やりが追いつかず、もう一度、種をまいたこともあった。

それでも、さして気にする風はない。一平は「全部、完璧な年なんてない。ナスは良かったけれど、トマトや葉ものは駄目だったとか。それが多品種栽培のいいところじゃないかな」。一つ失敗しても、別のものでカバーできる。そんな小回りの良さも強みだ。

(敬称略)