
来るべき春へ
充電
新時代
第二の古里で
県北の山々は雪に埋まり、平野部も冷え込みが続く。朝晩の寒さが厳しい時季だが、来るべき春に向け“充電”の時でもある。地元に溶け込んだ移住4家族は、豊かな自然や厚い人情の中で暮らし、第二の古里・群馬の地で新たな時代を迎えようとしている。


家の外は大雪
豪雪地帯として知られるみなかみ町藤原に、本格的な冬将軍がやってきた。厳しい寒さの中、北山家の新調した薪ストーブに郁人(44)が火を入れるが、最初は煙がうまく外に逃げない。「パパ、煙たいよ」と桂月(13)と瑠那(11)。郁人が笑う。
家の外は大雪だ。部屋が暖まり始めた頃、スキー場で働く路加(47)も戻り、4人でボードゲームを囲んだ。楽しそうな空気に誘われたウサギのフジワラサチオは、ファンヒーターの前に陣取って寝息を立て始める。瑠那は「私がサチの隣!」とはしゃいでいた。
貴重なゆとり
冷たい北風が吹き抜ける渋川市赤城町、赤城山西麓に広がる畑で、堀井一平(39)と妻の裕紀(36)が黙々とネギを収穫していた。一平がスコップでネギを掘り出すと、はさみを持った裕紀が余分な葉や根を切り落としていく。
冬場に収穫・出荷できる野菜は少ないが、家の修理や片付け、新しい野菜の研究、栽培技術や時期の改善など、やらなければならないことはいくらでもある。それでも農作業に追われる春から秋にはないゆとりを感じられる。本格的に農作業を再開するのは2月中旬。貴重な充電期間だ。


芸術語り合う場
藤岡市鬼石でギャラリーカフェを営む渡辺嘉幸(49)、彩英子(39)夫妻の新年が始まった。昨年は積極的に行事に参加し、地域に溶け込んだ2人。新年はカフェのメニュー開発や一般の人も芸術について語り合える場所づくりに励む。
地元藤岡産の小麦粉で「三波石」を模したクッキーを作った。国内外の芸術家が滞在し、創作する「アートレジデンシー」の影響で、外国人芸術家との交友も広がった。新年の目標は現代アートに関する「雑談会」を開くこと。外国人芸術家や一般の人も交えた交流の場にしたいという。
孫成長も原動力
伊勢崎市日乃出町でハンバーガー店「KMT」を開業して間もなく1年。店を営む日系ブラジル人2世のキシモト・ケイフク(53)、トシコ(64)夫妻は、家族と協力しながら弁当店と両立させてきた。
孫たちの成長も原動力だ。12月に長女のアキミ(28)の次男、ヒロユキ(5)と長女、ユメ(1)らが出演する保育園の 発表会を見に行った。4月に小学校に上がるヒロユキにとって、最後の発表会。着物姿で刀を持って踊る遊戯を 見たアキミは「家で毎日練習していたから…」と涙をぬぐった。
(敬称略)