板倉町

上毛かるた「鶴舞う形の群馬県」で、鶴のくちばし部分に当たる板倉町。南に利根川、北に渡良瀬川、東には広大な渡良瀬遊水地が広がる。

近年、全国的な自然災害への懸念高まりを受け、町は独自の防災対策を打ち出し住民に安全安心な暮らしを提供するとともに、若い子育て世代の支援や産業振興によって、人口減少に歯止めをかけようと全力を挙げる。

子育てしやすい 安全安心なまち

防災拠点の新庁舎 栗原実町長

―人口減少、少子高齢化が進む中、これからのまちづくりは。
生産年齢人口の減少により経済の右肩下がりは避けられない。町の予算を考えた場合、歳出を抑制しないと町民サービスの低下を招く。一方で歳入が維持できれば町民一人当たりの予算を増やせる。税収を維持できる町政を目指し、そのための一つは、子育て世代が住みやすい環境、もう一つが産業の活性化だ。
―子育て世代の支援策として、2年前から小中学校の給食費を無料化した。
全国で給食費の滞納が問題となっている。子育て支援だけでなく、子供に親の経済格差を感じさせたくないという思いがある。2人の子供の場合9年間で約90万円補助することになる。これから子供がほしいと考えている方や、もう一人ほしいと考えている方の後押しになると考えている。
―産業の活性化は。
県企業局が開発した板倉ニュータウンは、218ヘクタール全部を住宅用分譲地として販売したが、思うように売れず46.6ヘクタールを産業用地に用途変更した。産業用地の販売は順調で、製造業を中心に14社が進出してもらえた。
―新庁舎が2月に開庁した。防災・災害復旧の拠点となる。
新庁舎は別の予定地があったが、板倉は比較的低い場所にあるにもかかわらず水の災害を想定していなかった。東日本大震災を機に、水害を考え標高の高いところに場所を移した。庁舎の地盤を駐車場から1メートル高くし、町民に貸与する防災ラジオの送信局を設けた。町民が一時避難できるよう議場も床をフラットにするなど次世代につなぐ新たな拠点になったと思う。
2月に業務開始した新庁舎

新たなまちづくり

群馬県が開発する住宅団地「板倉ニュータウン」=写真=は、分譲規模を当初販売目標の3400戸から約1400戸に縮小する一方、北側の一部を産業用地に用途変更し、東武日光線駅を中心に東洋大学、住宅、産業が調和した新しいまちづくりが進む。

宅地販売は分譲価格を大幅に値下げし、坪10万円台を中心に最も安い区画では7万円台からを設定。町は東京まで電車で約60分という利便性や閑静な住環境をPRしている。産業用地の販売では、これまでに食料品製造、物流など14社が進出。東北自動車道ICまでの近さ、工業用水の豊かさなどから、引き合いも多く順調な企業立地が進んでいる。

給食費を無料化

給食費無料化を「ありがたい」と感謝する田口さん、保科さん家族

町は2017年度から町内の4小学校と中学1校の給食費を無料化した。対象は約1100人で年間予算は約5500万円。

板倉西小学校に長男(5年生)と次男(2年生)が通う田口千絵美さん(39)=板倉=は「2人の給食費が無料で助かる。年少の長女もいるので3人の給食費が無料となれば、その分他の教育費に充てられる」と話す。

板倉中学校に長男(1年生)と板倉南小学校に次男(4年生)がいる保科恵子さん(40)=大高嶋=は「館林市内で働いているが、職場の人に給食費が無料と話すと驚かれる。4月からは長女が新入学なので経済的にもありがたい」と無料化の恩恵を喜ぶ。

防災情報 ラジオで

台風や豪雨による水害の発生に備え板倉町は、住民に防災情報を的確に伝えるため、町内全戸に防災ラジオ=写真=の無料貸与を始めた。

県内自治体の多くが導入する防災行政無線は、荒天時には風雨で音声が遮られ、屋内の住民に情報が伝わりにくい欠点がある。防災ラジオはポケベルの電波を利用することで、建物内の受信にも適していて、防災情報を確実に住民に伝えられるようになる。県内自治体初の取り組みで、防災の拠点として生まれ変わった町新庁舎とともに、町民の安全安心向上が期待される。